コラム

有珠山ロープウェイに乗って山頂へ!今なお活動を続ける有珠山の大地の力にふれる

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北海道の支笏洞爺国立公園内に位置する有珠山は、常時観測火山として地球の活動を知ることができるダイナミックな景観が魅力です。有珠山を含めた周辺地域は「洞爺湖有珠山ジオパーク」として「日本ジオパーク」と、ユネスコによる「世界ジオパーク」に認定されています。初級の登山コースとしても人気ですが、ロープウェイも運行しているので気軽に山頂まで足を運べます。山頂駅の近くには洞爺湖と昭和新山を望む絶景のテラスや火口原展望台もあるので、過去に噴火した火口を間近に眺められるのもポイントです。

本記事では、有珠山の歴史と有珠山ロープウェイについて、詳しくご紹介します。

この記事のポイント!
・有珠山は江戸時代から何度も噴火を繰り返し、現在も活動を続けている
・有珠山の噴火によって洞爺湖温泉が見つかった
・有珠山の噴火によってできたのが昭和新山
・山頂駅には洞爺湖を望むテラスがある
・有珠山ロープウェイは冬も運行していて人気がある

そもそも有珠山ってどんな山?

有珠山ロープウェイのテラス

有珠山は、北海道の南部にある洞爺湖の南側に位置する活火山です。アイヌ語で入り江を意味するウスから、噴火湾沿岸の入り江の沿岸にあった集落と、その奥に位置する山がウスと呼ばれていましたが、後にカルデラ式の山容が臼のように見えることから、「臼が嶽」や「臼岳」と呼ばれることもありました。

記録に残る限り、江戸時代から何度も噴火を繰り返してきた有珠山は、今なお活発な火山活動が続いていますが、データの蓄積も多く「噴火予知のしやすい火山」とも言われています。
繰り返す火山活動により、新たな火口ができたり地殻変動による隆起が起きたりすることで、有珠山とその周辺はダイナミックな景観となっています。山麓には複数の「溶岩円頂丘(溶岩ドーム)」「潜在円頂丘(潜在ドーム)」と呼ばれる山があり、それぞれ大有珠・小有珠・昭和新山・金比羅山・明治新山・オガリ山などといった名前が付いています。標高は733mですが、これは大有珠の標高点です。

有珠山は、いくつもの火口を外輪山が抱え込むような形をしています。東側に一番標高の高い大有珠があり、火口原をはさんで西側に小有珠、大有珠と小有珠を繋ぐ外輪山はそれぞれ北外輪、南外輪と呼ばれています。南外輪のほうがなだらかになっているため、こちらには外輪を尾根のように進む遊歩道が設置されています。ロープウェイで山頂まで行くと大有珠の下に到着しますが、そこから少し登った位置に火口原展望台があり、有珠山の内側にあるいくつもの火口や潜在ドームを眺められます。火口原展望台から長い階段を降りると外輪山遊歩道です。火口原をより近くから眺めることができます。

有珠山の噴火によって発見されたのが洞爺湖温泉

洞爺湖町の町並み

20世紀の100年の間にも有珠山は4回噴火しています。1910年(明治43)年の噴火では北西麓から北東麓にかけて合計45個もの火口が開き、この時に起こった地殻変動で明治新山が誕生しました。また、この噴火によって火口に近い洞爺湖岸には温泉が湧出しています。この温泉が1917(大正6)年に発見され、温泉地として名高い洞爺湖温泉の始まりとなりました。

その後、1944(昭和19)年には昭和新山を形成する噴火が起き、1977(昭和52)年の噴火では有珠新山が誕生しています。この1977年の噴火では噴煙の高さは最大12,000mにおよび、北海道内の119市町村に火山灰が降り注ぎました。火口付近では牧場が消滅し、当時の国鉄胆振線が不通となり、小学校の校舎も破損して移設を余儀なくされました。付近の被害総額は当時の金額で220億円以上と言われています。当時、道南~道央に住んでいた一定以上の年齢の方であればこの時の噴火を記憶しているかもしれませんね。

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有珠山が最後に噴火したのはいつ?

有珠山が最後に噴火

現在一番新しい噴火は2000(平成12)年の噴火です。火山性地震の分析などにより噴火予知がなされ、緊急火山情報が出されました。この噴火では新山は形成されなかったものの、少なくとも65個の新しい火口が出現し、地殻変動による道路の損壊、住宅地や温泉街にも熱泥流が流れ込むなどして甚大な被害を与えました。ただ、適切な避難誘導により人的被害は出ていません。これは噴火の事前避難に世界で初めて成功した例としても知られています。

この時に被災した町の様子は現在でも、洞爺湖温泉街からほど近い「金比羅火口災害遺構散策路」や「有珠山・西山山麓火口散策路」で見ることができます。断層により割れたアスファルトや、火口に水が溜まって形成された沼、泥流や隆起によって変えられた地形など、火山被害のすさまじさを目の当たりにできます(一部立ち入り禁止区域あり)。

「昭和新山」は有珠山の噴火でできた山

昭和新山特集のメインイメージ

昭和新山は、1944年の噴火で隆起した山です。有珠山の麓にあった平地に溶岩によって形成された火山で、こちらも常時観測火山に指定されています。昭和新山は世界でも珍しい、私有地にある火山です。常時観測火山であることと私有地にあることから、自由に入山することはできません。

昭和新山は平坦な麦畑から地震とともに突然隆起し、わずか2年ほどで今の昭和新山が誕生したという経緯があります。入山はできませんが、近くに行けば独特の赤い山肌や今ももくもくと上がる噴煙など、雄大な自然を感じることができます。
昭和新山が形成された時の噴火は戦時下だったため、正式な観測は行われませんでしたが、地元の郵便局長であった三松正夫氏が詳細な観測をして記録を残しています。この記録は「ミマツダイヤグラム」と呼ばれ、世界的にも高い評価を得ています。三松氏は後にこの貴重な火山を保護するため、そして被災した住民への支援のために私財を投じて昭和新山周辺を買い取っています。

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有珠山ロープウェイについて【基本情報】

有珠山ロープウェイのレールと昭和新山

有珠山の麓、昭和新山側にある「昭和新山山麓駅」から、大有珠の下にある「有珠山頂駅」を結ぶのが有珠山ロープウェイです。全長は1.37km、高低差は約356mで所要時間は約6分です。

ゴンドラは大型タイプなので揺れも少なくて快適です!空中散歩を楽しみながら、豊かな自然が織りなす四季折々の景色を眺めてください。

有珠山ロープウェイの車体

有珠山ロープウェイの交通アクセス

有珠山ロープウェイへ行くときは、車でのアクセスがおすすめです。札幌方面から2時間、新千歳空港から約1時間30分ほどでアクセスできます。有珠山ロープウェイには400台分の駐車場が確保されているので、駐車場所の心配は必要ありません。

また、冬期は運行していませんが、夏期は道南バスを乗り継いで有珠山ロープウェイへ行くこともできます。JR洞爺駅から出発する洞爺湖温泉行きのバスに乗り、終点の洞爺湖温泉バスターミナルで下車。同じく道南バスの昭和新山行きバスに乗り換え、終点下車すると有珠山ロープウェイはすぐそこです。

洞爺湖の位置を表すマップ
住所北海道有珠郡壮瞥町字昭和新山184-5 [Googleマップ]
電話番号0142-75-2401
営業時間8:15~17:45
※季節により変動あり
休業日無休
※車両検査のため冬期運休あり
往復料金大人1,800円、小学生900円(各税込)
運行時間始発/8:15または9:00
最終/16:00・16:30・17:45のいずれか
※運行パターンは時期や日により異なる
駐車場410台(乗用車1台500円)
アクセス・新千歳空港から約1時間30分
・道央道虻田洞爺湖ICから車で約15分
公式サイト有珠山ロープウェイ

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有珠山ロープウェイの山麓駅と周辺には何がある?

有珠山ロープウェイ乗り場

昭和新山山麓駅にはお土産の購入や食事なども楽しめる複合施設「火山村」があります。施設内には「洞爺湖有珠山ジオパーク火山村情報館」もあり、有珠山の歴史や火山の営みを学ぶことができます。

有珠山食堂 噴火亭

2022年4月にリニューアルオープンした食堂です。明るく開放的で、清潔感のある造り。角煮丼やからあげ丼などの丼メニューやカレーライス、カツ丼など子どもから大人まで親しまれるメニューが揃っています。昭和新山の麓という立地なので、窓の向こうには迫力のある昭和新山も眺められます。ロープウェイ乗車前のランチにおすすめです。

営業時間10:30~14:30
問合せ先0142-75-3113

お山の売店 新山堂

茶色い三角屋根が目印のショップです。ぬいぐるみやマスコット、タオルやポーチ、アクセサリーなどの雑貨が並んでいます。お土産や思い出の品を選んでみてはいかがでしょうか。また、コロッケやポテト、ソフトクリームなども販売しているので、ちょっとした休憩スポットとしてもお役立ちですね!

営業時間9:30~16:00
問合せ先0142-75-2401

洞爺湖有珠山ジオパーク 火山村情報館

「洞爺湖有珠山ジオパーク」は2009年に、日本で初めてユネスコの世界ジオパークに認定されたエリアです。ジオパークとは、変動を続ける地球の過去を知り、未来を考え、今の自分たちに何ができるのかを考えていくことを目的としています。火山の多い日本という国で、度重なる噴火を経験してきた有珠山とその一帯について、パネルや「噴火体験室」などで学べます。噴火の歴史や火山の活動の仕組みを学べる写真パネルは、山頂駅にも設置されています。

営業時間8:15~17:45
※季節により変動あり
問合せ先0142-75-2401
入場料無料

三松正夫記念館(昭和新山資料館)

三松正夫記念館(昭和新山資料館)

1944年の噴火の折に昭和新山形成の詳細な記録を残した三松正夫氏の全資料を保管・展示する資料館です。国指定特別天然記念物である昭和新山は、この資料館の屋外展示物でもあります。

地元の郵便局長であり、アマチュア火山研究者でもあった三松氏が昭和新山の造山活動を毎日克明に記した「ミマツダイヤグラム」は世界的にも貴重な記録です。その原図やスケッチなど、たくさんの資料が展示されています。

営業時間8:00~16:00
問合せ先0142-75-2365
入館料大人300円、中学生以下250円

昭和新山熊牧場

昭和新山熊牧場

日本では北海道のみに生息するヒグマを飼育する観光牧場です。年齢別に檻が分かれて飼育されており、大牧場では人間が檻の中に入ってヒグマを間近で観察する「人の檻」が人気です。季節によっては小さな子熊を見ることもできますし、園内では熊の餌も販売されているので餌やり体験も可能です。

営業時間8:30~16:30
※季節により変動あり
問合せ先0142-75-2290
入場料大人900円、6歳~小学生500円

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有珠山ロープウェイの山頂駅には何がある?

有珠山山頂駅

山頂までいくと、すぐ近くの展望台に「Mt.USUテラス」 があります。このテラスは洞爺湖や昭和新山を一望できる絶景の場所!ここから遊歩道を進むと「火口原展望台」、そしてそこから「外輪山遊歩道」へとつながります。

Cafe Mt.USU

有珠山ロープウェイのテラス

山頂駅から出てすぐの場所にあるカフェです。豊富なドリンクメニューの他、ホットサンドやソフトクリームなどもあるので、テラスからの雄大な眺めとともに満喫できます。

「Mt.USUテラス」は広い展望デッキにソファ席を配した、開放感たっぷりの造り。眼下に洞爺湖と昭和新山を望みながら、カフェメニューを楽しめます。春から初夏にかけての季節なら、早朝に発生した霧がテラスの下に雲海を作ることもあるそうなので、霧が発生しそうな気候条件の時には早起きして行ってみるのもいいですね。

有珠山ロープウェイのテラス
営業日ロープウェイ運行日に準ずる
営業時間4月中旬~10月末の9:00~15:30
※季節により変動あり

火口原展望台

有珠山火口皆原展望台

山頂駅から、舗装された遊歩道を約7分ほど登ると、1977年に噴火した銀沼大火口(小有珠)を見下ろす「火口原展望台」に到着します。こちらは今も水蒸気が立ちのぼる迫力ある風景!山頂まで行ったらぜひこちらの展望台にも足を運んでみてください。

外輪山遊歩道(冬期閉鎖)

外輪山遊歩道

火口原展望台から噴火湾方向へおよそ1.1km、長い階段を下って有珠登山道合流地点まで続くのが「外輪山遊歩道」です(所要時間約30~40分)。登山道との合流地点からさらに10分ほど登ると噴火湾を一望する外輪山展望台にたどり着きます。

遊歩道を歩いていくと、巨大な銀沼大火口を展望台よりさらに間近に眺められます。また、遊歩道自体が、火口の外輪に設置されているため、尾根歩きをしているかのように、左右両方の景色を楽しめます。火口側の反対側は穏やかな内浦湾が広がっています。

遊歩道

ただし、遊歩道はアップダウンもあり、途中までは長い階段が続くため、それなりの体力が必要になります。気候の良い時期にトレッキングとして楽しむ人が多いコースです。

有珠山ロープウェイは冬はやってる?

有珠山ロープウェイの冬

ロープウェイは点検期間などを除き、基本無休です。春には山桜やツツジ、夏は瑞々しい緑、秋には鮮やかな紅葉、冬は美しい雪景色が楽しめるので、ぜひ春夏秋冬、様々な顔を見せる有珠山の景色を満喫してみてください。

ただし、外輪山遊歩道は冬期は雪のため閉鎖されているので、トレッキングを楽しむ方は閉鎖期間などを確認する必要があります。

まとめ

有珠山は幾度となく噴火を繰り返し、そのたびに新火口の形成や隆起によって山体そのものはもちろん、周辺地域の地形さえも変えてきた活火山です。今もいくつかの火口からは水蒸気が立ちのぼっています。それはまるで地球の息づかいのようで、地球が生きていることを実感できる光景です。

有珠山の噴火は大きな被害ももたらしていますが、一方で温泉という恵みももたらしています。有珠山エリアを観光した後は、洞爺湖温泉でひと息入れてみるのもいいかもしれませんね。

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