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現役ガイドが先生! 札幌観光バスのバスガイドたちに受け継がれるスキルと生きた情報のヒミツ

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通常、バスガイドになるには決まったルートや必ず取得しなければならない資格があるわけではありません。資格よりも知識や経験、おもてなしの心が求められる仕事です。札幌観光バスもそれは同様ですが、“お客様を乗せて運行する”ことを一番に考え、バスガイドは日々訓練や勉強を続けています。

2022年12月に旅行新聞新社発表の「プロが選ぶ優良観光バス30選」で、第7位(北海道唯一の入選・北海道最高位)を受賞。安全面への取り組みやバスガイドの接客応対が評価されました。本記事では、札幌観光バスならではのバスガイド研修について紹介します。

札幌観光バスの先輩バスガイドは先生にも変身!

さっかんジャーナル-バスガイド研修で使用するテキストと丹野ガイド
講師を務める札幌観光バスの丹野ガイド

社員として毎年数名のバスガイドを採用する札幌観光バスでは、現役の先輩バスガイドが講師となって新人の研修を担当しています。実はこれ、業界では珍しいこと。というのも、他社では“引退したバスガイド”が新人研修を行うケースが多いのです。

独自に制作したテキストで猛勉強!

入社後、新人ガイドはバスツアーで近い将来訪れる主だった地域の詳細が書かれた札幌観光バスオリジナルのテキストで学習します。北海道各地を網羅しているので、テキストは全部で10冊近くにもおよぶそう。ゆくゆくは、その内容をすべて覚えなくてはなりません。新人バスガイドの最初の仕事はガイドの基本中の基本、観光地や名所の知識を丸暗記することです。

さっかんジャーナル-バスガイドのテキスト

本番を想定した実地研修でさらにレベルアップ

さっかんジャーナル-バスガイドのメモ

主要エリアの知識をテキストで覚えたころ、北海道での観光シーズンが本格化する前に新入社員バスガイドの初めての実地研修がスタート。お客さんはいませんが、本番さながらに先生役の先輩2名と新人2名が実際のツアールートをバスで巡り、ガイドの研修をおこないます。
実際にツアールートを巡ってみると、普段は通り過ぎてしまう景色の中に地元の人でさえ知らない歴史や言い伝えなど、大小さまざまなエピソードがあることも。これらは経験を積んだ先輩ガイドから伝授されるので、とても貴重な経験になります。

<例えば・・・>
層雲峡温泉の研修では、峡谷の岩がそれぞれ持つ特徴を実際に見ながら先輩講師の知識とスキルを伝授してもらいます。そしてノートに文字やイラストを描きこみ、自分オリジナルのテキストが出来上がります。新人バスガイドがベテランになった時、今度は新人へ教えられる生きた教科書になるのです。

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入社3年目が成長のターニングポイント

テキストを使った勉強、先輩との実地訓練を繰り返し、新人たちがデビュー。最初はドキドキしながらも、少しずつ新しいツアールートを経験しながら、着実に知識とスキルと身に着けていきます。こうして3年が過ぎた頃、新たに課題が見えてくることもあります。

どれだけ知識を蓄えられるかが重要

「3年目になると、新人としては担当するツアーコースが増えはじめ、それに伴い多くの知識が求められるようになります」と先輩ガイド。それまでは、全道各地を訪れて非日常で新しい発見の連続。毎日が充実しているように感じられるそう。担当するツアーエリアが増えた分、暗記する知識の量が膨大になり、自主的な勉強と仕事の時間のやりくりがもっとも難しく感じる時期です。

さっかんジャーナル-バスガイドのスカーフ

楽しさが大変さを上回るのがバスガイドの仕事

さっかんジャーナル-バスガイドと丹頂バス

先輩ガイドの経験では、ハードに思える3年目ですが、その1年を乗り越えると4年目、5年目からは一転、楽しさが上回ってくるのだそう。ひと通りの経験と知識が身につき、視野が広くなることに加え、少しずつ自分らしいガイドができるようになってくるからです。余裕が生まれてくるのも、この頃。

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バスガイドのマストアイテム

あちらこちらへと身軽なイメージのバスガイドですが、実は隠れた荷物持ち。バスが出発してから何か困りごとがあっても対応できるように、いろいろ隠し持っています。「これは持っていた方がいいよ」と、新人にアドバイスすることもあります。

三種の神器は肌身離さず

バスガイドに欠かせない三種の神器は、マイク、バスを誘導するホイッスル、そして白い手袋。近年は感染症対策の一環で、マイクは1人1つずつ保有しています。まさにマイマイク。また、ホイッスルには行く先々で見つけたツアーの思い出のキーホルダーを付けているのもポイント。カワイイからという理由もありますが、乗車されるお客様との会話のきっかけにもなっているようです。

さっかんジャーナル-バスガイドの三種の神器

7つ道具以上!? バスガイドのこだわり

前述のマストアイテムに加え、それぞれのバスガイドが「これは便利!」と思う7つ道具を持っています。実際には7つ以上。例えば、観光バスは窓が命なので水の吸収率が高い窓拭き用タオル、窓の結露取りグッズ、掃除用のゴム手袋などそれぞれ便利と思ったものを持っているそう。さらに夏用のハンディ扇風機を持つ強者も。そして、スマートフォン充電器。スマートフォンはさまざまな場面での業務通信連絡に必要なため充電器は欠かせませんが、最近は充電器を忘れたお客さまにお貸しすることもあるため、活躍シーンが多いと言います。これもおもてなしの精神です。

大事なものはバスケットに入れて

さっかんジャーナル-バスガイドのアイテムバスケット

とある先輩ガイドは「ひとつのバッグには収まり切らないから」と、買い物用バスケットをホームセンターで購入し、“バスケット入りバスガイドセット”を持って毎日バスに乗り込みます。バスケットに入れると、忘れ物防止にもなり、持ち運びがスムーズだそう。とても便利なので、今後、札幌観光バスのスタンダードになるかもしれません。

楽しいバス旅を提供しながら、心に残る素晴らしい仕事

さっかんジャーナル-バスガイドが撮影した一枚
ツアー中に撮れた流氷と夕日(撮影:札幌観光バス 丹野ガイド)

簡単ではないバスガイドの仕事ですが、ツアーの合間にはこんな素敵な瞬間に出会えるのも楽しみのひとつ。また、この瞬間をお客様と共有でき、最後には「楽しかったよ」と言ってもらえるやりがいのある仕事です。最後に現役バスガイドの仕事の感想を紹介します。

  • 覚えることが多く大変なこともありますが、旅行関係の仕事に就きたかったので、この仕事ができて嬉しいです(入社1年目)
  • 毎日忙しくしていると、休日は家事と睡眠で終わる日もありますが、毎日、仕事が終わったときに達成感をすごく感じられて楽しいです(入社20年)

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さっかんジャーナル編集部

日々お客様を全道各地へご案内する、札幌観光バスのスタッフによる編集チーム。
観光スポットや話題のグルメをはじめ、その地の達人から見聞きした小粋な話まで、とにかく情報量が豊富です。
皆さまのバス旅が楽しくなる&推しバスになってもらえるよう奮闘中!